センゴク外伝 桶狭間戦記というもはや芸術作品

漫画って低くみられる傾向があるように思えるんですけど下手な小説より物語がしっかりしていて人間描写が出来ている漫画は数多くあります。数多くありますが、特に物語の精巧さに充足感を得られる漫画を紹介したいと思います。

それが「センゴク外伝 桶狭間戦記」という漫画です。

そもそもセンゴクって何?

仙石秀久という一度大失敗をやらかして追放されたにも関わらず挽回した武将を主人公にして戦国時代を紐解いていく漫画です。

センゴク→センゴク桶狭間戦記→センゴク天正記→センゴク一統記→センゴク権兵衛という感じで連載が続いており2018年現在センゴク権兵衛が連載されています。

初期のセンゴクは今までの戦国時代の話を実地調査から通説と異なる目線で物語を展開しています。また、主人公が何とか気合で頑張る感じのちょっととんでもストーリーでもあるんですが勢いがあって楽しめます。

どのシリーズもそうなんですが主人公の仙石がいない方が話が面白いです。そりゃあ、マイナーな武将より信長とか秀吉を軸にして話を展開した方が面白いですよね。

基本的に面白いのは間違いないんですが、連載を重ねるごとに作者の知識がとんでもないくらい付いてしまったのでかなり挿絵が入っている教科書のような感じになってしまった感が拭えません。

何でもそうなんですけど全盛期までの過渡期が一番面白いじゃないですか。このセンゴクの作者の全盛期はセンゴク天正記だと自分は思っています。話に勢いはあるし、実地調査により通説を独自解釈で面白くしてあるし、戦国時代の知識を勉強できるし、なにより人間描写がとてつもなく上手い。織田VS武田の長篠の戦いが天正記に収録されているんですけど感動して涙が出ました。それだけ、人間の描写がどこまでも美しいストーリー展開になっているのがセンゴク天正記です。これも、是非見てください。

全てのバランスが良い

上記で説明した通り、全盛期はセンゴク天正記なんです。その全盛期までの過渡期がセンゴク外伝桶狭間戦記なんです。

過渡期ゆえに全てのバランスが優れているんです。人間描写が良いのはもちろんのこと、絵もどんどん上達していきますし、知識がしっかり身につけられるほど情報があるのに情報過多になり過ぎていない。洗練され過ぎていないので勢いがあり話にグイグイと引き込まれていく漫画。それが、センゴク外伝天正記です。

さらに、連載物ではあるんですが外伝単品だけでも読めます。本編をわざわざ読まなくても全く問題ありません。また、桶狭間の戦いという誰でも知ってる信長VS義元の戦いなのでどんな人でもある程度の事前知識があるのですんなりと話を理解できるというのも大きいです。

全5巻なのでサクッと読めてしまうのも素晴らしい。

なので、作品としても漫画の巻数的にも全てにおいてバランスが良いので誰でも楽しめます。

通説の今川義元に挑む

みなさん、今川義元ってどんな人を思い浮かべますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麻呂ですよね!!

 

某ゲームのせいで今川義元は麻呂でダメなイメージです。授業でも、信長に油断して逆転負けした武将として紹介される程度ですよね。

桶狭間戦記を読んだ後は麻呂なんて思えません。今川義元がカッコよくてカッコよくてしょうがなくなります。

作者の綿密な調査と作者の人間描写の上手さで今川義元がいかに戦国時代において最も先進的で最も革命的であったかを表現しています。

法律を整え室町幕府を頼らず自らの力量で領地経営に乗り出した真の戦国大名で時代の先駆者であると桶狭間戦記を読めばわかります。

信玄で有名な甲州法度もこの今川義元が作成した今川仮名目録追加によって影響されたものでありいかに今川義元が偉大であったかがわかります。

また、この仮名目録追加により兵の大量動員を成功させるシステムを作り上げました。このシステムは戦国時代の根幹を成すものでいかに有能な戦国大名であったかがわかります。

数々の謀略、戦を経て時代の荒波を乗りこなす寵児として描かれており、下剋上の寵児である信長との対比も非常に痺れます。

人間描写と運命の描写が凄すぎる

なんども書くんですがこの漫画人間描写が本当に上手いんです。

今川義元がいかに有能な戦国大名で時代の荒波を乗りこなす寵児として描き、信長を下剋上の荒波を乗りこなす寵児として描くことで天才VS天才という絶対に面白いストーリー展開を見せてくれます。

調略という相手を味方に引き込んだり貶めたりというやり方があるんですが、これを思いやりの才能と表現し義元がいかに相手の感情を見て相手に調略を仕掛けたかを表現するだけでも面白いのに、それをされた感情は激しいが非常に慈悲深い信長がいかに苦悩し義元に挑戦していくか丁寧に描かれており読了後の爽快感はとんでもないです。

天才VS天才という構図だと義元が油断して負けたとはならないわけです。それを運命や時代の流れによる偶然でもあり必然でもあると表現しています。

信長と言えば銭、永楽銭が有名ですよね。信長以前は銭より米の方が重要でいかに米を蓄えるか、米を得るかが大事でした。それが、信長の登場でいかに銭を蓄えるか、銭を得るかという考えに変わります。つまり、米VS銭という時代の流れという構図を作中の中で描写しているんです。

さらに、なぜ戦国時代が始まったかを小氷河期により米が採れなくなりこれにより幕府が完璧に求心力を失い幕府に変わり国民に米を食わすだけの強いリーダーである戦国大名が必然として誕生したと表現してあります。

小氷河期なので異常気象であることはなんとなく想像できますよね。現在の気候では考えられないような雪や雨が降ったりします。

桶狭間の戦いというと信長が天の恵みの雨に乗じて奇襲したということになっていますよね。これは偶然ではあるんですが小氷河期という視点から見れば必然的な大雨であったと表現しており時代と運命の交差が天才VS天才、義元と信長どちらを選びどのように時代が変わっていくかのプロセスであった描写されています。

歴史好きじゃなくても読むべき

正直この漫画を読んで震えました。こんなにも人間描写が出来ており、天才VS天才という構図を少しも陳腐にさせず時代の流れと運命を上手く表現しており誰でも知ってる桶狭間の戦いをここまで面白く昇華できるものなのかと思いました。

歴史好きはもちろんのこと、歴史が好きではない人でも確実に読んでおいた方が良い漫画です。

 

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