ディズニー映画と聞くと捻くれた自分みたいな人間は子供向けの映画だと決めつけてしまうと思います。
自分も子供向けで大人が見るものではないと思っていたのですが実際に見てみて大人こそ楽しめる出来が良すぎる映画だと感じました。
なぜズートピアが大人こそ見るべき映画なのか紹介したいと思います。
あらすじ
『太古の昔、肉食動物が草食動物を襲い、共存などできない世界であったが、主人公であるウサギのジュディ・ホップスたちの住む世界では、肉食動物と草食動物は共存し、肉食動物の凶暴な部分は既に失われていた。ジュディは、「世界をより良くしたい」と願い、両親たちの反対を押し切り、ウサギ初の警察官になる。理想を抱いて警察学校を首席で卒業するが、待っていたのは期待外れの交通違反の取り締まりだけだった。そんな中、ジュディはキツネのニック・ワイルドと出会う。ニックは、詐欺師まがいのことをしてお金を稼いでおり、取り締まろうとしたジュディだったが、逃げられてしまう。だが、失踪したカワウソの捜索を担当し、その調査資料で、ニックが関係していると考えられ、ジュディはニックに調査を手伝うように依頼。仕方なくニックは、ジュディと捜索を行う。その過程で様々な問題に直面しズートピアの真相に迫っていく。』
あらすじだけ見るといかにもな子供向け映画という感じが凄いですよね。実際にキャラも可愛いので子供向けであると思ってしまうのも仕方ないです。
しかしズートピアはあらすじだけでは測れない面白さを秘めています。アナと雪の女王がしきりに宣伝されていましたがむしろズートピアこそ宣伝しなければならない社会人必見の映画なのです。
子供視点で見ても面白い
大人が見ても面白いのですがディズニーは天才なのでもちろん子供が見ても普通にめちゃくちゃ面白いです。
キャラが可愛く笑いあり感動ありドタバタアクションがあり退屈させない展開が次々と襲ってくるのであっという間に見終わってしまいます。
大人が楽しめる映画ではあるんですが子供に夢を与えるという基本コンセプトを忘れずに続けるディズニーには脱帽します。
何も考えずに見るだけならば主人公であるウサギのジュディが弱いというレッテルを張られていて辛い思いをするが負けずに一途に自分の夢を追いかけ成功し最後は大団円という非常に心温まるハートフルなストーリーなんです。
そのためキャラが全員動物で可愛い。夢を諦めずがむしゃらに努力し続ければいつか必ず報われるという希望。キャラ同士の非常にコミカルな掛け合いに笑えるお笑い要素。相棒のニックと仲たがいするも最後はお互いに協力する友情性。最後にはハッピーエンド。
子供が喜ぶ要素がずるいと思えるレベルで詰め込んであるので面白くないわけがないじゃないですか。
ですから、子供と一緒に見ても絶対に子供が楽しめる作品に仕上がっていて面白いです。
伏線回収が見事過ぎて大人でも興奮する
上記内容だけだと正直大人が見たらつまらなくはないけど面白くはないレベルだろうと思いますよね。
全くの思い違いです!!ストーリーが凄まじすぎて下手な推理小説を読むよりよっほど価値があります。
なによりズートピアは伏線の回収が見事過ぎて正直震えました。
子供向けだと思って何気ないワンシーンをボケっと見ているとそのわずか1時間前後で椅子からひっくり返るほど驚き興奮し画面に前のめりでのめり込む自分がいると思います。
ストーリー展開は何一つ無駄が無い何度見ても面白い。何度も見た方がより深く内容を楽しめるストーリーです。
ズートピア全体に対して言えることなんですが何もかもがミスリード。このミスリードに気付いた人だけがズートピアの魅力に気づきいつの間にかはまり込むことになります。
ストーリーを詳細解説すると絶対に見たときにつまらなくなるので、とりあえず騙されたと思って見てください。
色々小難しいことを考えなくてもストーリーだけで見る価値が十分にある作品なんです。
大人視点で見る痛烈な風刺
大人でも楽しめる理由としてズートピアが非常に痛烈な社会風刺をしているからなんです。
社会風刺と言うとなんだか説教臭いうっとうしい感じがすると思うのですがことズートピアにおいては説教臭くありません!!
なぜなら子供向けで上手くカモフラージュしているからなんです。
普通にボケ~っと見ているとディズニー面白いで終わってしまうんですがしっかりと意識して見ると絶対に子供向けじゃないって思うようになります。
社会風刺が出来てさらに子供向けで面白いという決して相いれないはずのものが上手く調和した矛盾こそがズートピア最大の魅力なのです。
何を風刺しているかと言うとズバリアメリカ社会です。
あらすじで太古の昔肉食動物は凶暴であったと紹介したのですがいきなりここがミスリードなんです。あらすじを鵜呑みにすると作品の真の良さが曇ってしまいます。
ズートピアの世界では肉食動物より圧倒的に草食動物の方が多いです。で、ちゃっかり文明を築き上げて民主制を敷いているので多数派である草食動物の方が実権を握っていることになります。
ということは肉食動物は一見体格が大きく怖そうに見えて強者であると錯覚するが実際は社会的権利が無い弱者である。
そのためホワイトカラーに就職することが出来ずに柄が悪い地位に身をやつすことになり怖いという印象だけが独り歩きして差別されてしまうという構造になっています。
まさしくアメリカ社会における白人と黒人の関係ですよね。
いつも白人が一方的に力を持っていて黒人を一方的に虐げているのにちょっと何かあれば黒人がいかに凶悪で冷徹で危険な人種であるか喧伝します。それをズートピアは可愛いキャラとコミカルさで上手くごまかしながら表現するという神業を披露してくれるのです。
さらにジュディがニックに対して肉食動物は怖いという何の根拠も無い差別発言をして一方的に傷つけます。
本来草食動物で弱いはずのウサギのジュディが肉食動物で牙や鋭い爪もある強いはずのキツネを傷つけるという逆転構造を作品の中で表現してみせています。
弱者が本当に弱者であるのか。このテーマに迫れる作品って説教臭い風刺作品を探してもなかなかないと思います。
つまりこの作品は偏見意識を持って見ると本当のことが見えないよ。差別をすると別の誤った視点で物事を理解することになるよ。誰でも立場によって被害者にも加害者にもなるんだよ。
そんなことを作品を通してわかる人だけにこっそりと伝えてくれる非常に意地悪で底意地が悪い作品なんです。
詳しく考察を知りたい人は世界の名著をおすすめする高等遊民.comさんに非常に深いところまで考察し尽くしてある記事があるので是非読んでください。
このようにズートピアは子供向けの皮を被りながら実はアメリカ社会ひいては世界で未だに残る差別社会を痛烈に批判すると同時に説教臭くならずさらにストーリー展開も非常に明瞭でわかりやすく伏線をちりばめながら見事に回収するという近年で類を見ないレベルの名作映画です。
作品そのものがミスリードであるというどんな人生生きていたらそんなことが思いつくのか疑問に感じると同時にその才能に嫉妬するレベルの脚本の完成度の高さが本当に素晴らしいです。
ディズニーだからと決して侮ってはいけない水準に達している映画であり見ないと人生損するレベルだと自分は思っているので是非一度は見てください。